イチ*コイ
雨のキオク



 黒い雲がこっちに来て、雨が降りだす。

 結構な大雨。

 アイツ…傘持っていって、……ねぇよな。

 仕方ねぇ…どうせいつものスーパーだろうし、迎え行くか。

 荷造りをそのまま放置して立つ。

 ほとんど終わってるし、いいだろ。

 ケータイと財布だけズボンの尻ポケットに入れて、傘を持って部屋を出る。

 真っ青な水色の傘と、真っ黒の大きな傘。

 雨は…アイツと、再び会わせてくれた。

 軒下で雨宿りしてるところを見付けた。


「迎え来てやったぞ」

「斗真!…ありがとうっ」


 ふんわり微笑む君。

 ああ…あのときと同じだ、なんて…俺も微笑んだ。







―――――







――大森 斗真、22歳

 梅雨入りして空気はどんよりと重く、過ごしにくい。


「はあ…」


 傘忘れるとか、まじ最悪。

 俺の10メートル前方、突然の雨で雨宿りする女発見。

 その姿が…少し、美華と被った。

 そんなはず、ないんだけど。

 諦めて歩いていくと、その女が車に水をかけられていた。



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