百地外伝~夢と希望



家の外は、都会育ちのあたしには想像できない静けさ、月明かりだけが頼りの暗闇だった。



その静けさに慣れたころ、あたしの耳に、風が竹を揺さぶる静かなザワメキ、川のセセラギ、虫の音、そんな微かな音が鮮明に飛び込んできた。


音を聴くって、こういうことなのかな、そんな厳かな気持ちになる。

三人、庭先で、無言のまま月を眺めていた。




「ちょっと上、行ってみるか……」




翔の掛け声に、反射的に立ち上がった。

翔の後に従って、上の畑に通じる小路を登っていく。




そこには、昼間とは全く違った景色が広がっていた。




暗闇の中に現れた希望。

山ばかりと思っていた景色に、間隔を置いて幾つもの光が燈っていた。
< 225 / 328 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop