俺様王子と秘密の時間


言われなくてもわかっていたの。


みんなの王子様はあたしの持っていないモノを全てを持っているような人で。

最初あたしが千秋を嫌いだったのも、少しはそんな理由があったからだと思う。

惨めで悔しくて悲しくて、全部がごちゃ混ぜになった涙が溢れてくる。


グスッ……鼻をすする音がやけに響いていた。




ヴーヴーヴー。

ケータイが鳴っていることに気づいてポケットから取り出し、通話ボタンを押して耳に当てた。



「もしもし……」

《さっきからかけてんだけど?》


夏休み明け、開口一番がそれだった。



《教室に鞄置いてあるけど、お前今どこ居んの?》

「えっと……」

《保健室においで。10秒で来い》


声を詰まらせるあたしにそう言うと反論する間もなく千秋は電話を切った。



「はぁああ……」


あたしは重い足取りで保健室に向かった。


 

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