俺様王子と秘密の時間
「シイはてめぇの所有物か?」
水びたしの地面を歩く羽鳥の制服のズボンに泥水が飛んだ。
羽鳥はそんなことなんてお構い無しに歩いてくると、千秋の真ん前でピタッと足を止める。
「なあ?なんでそんな熱くなんだよ?」
得意気な顔で千秋は首を傾げる。
羽鳥は挑発されて黙ってるタイプではないことをあたしは知ってる。
だけど今日は違った。
「シイ、行くぞ」
「えっ?」
あたしの腕を乱暴に取るから、そのはずみで千秋の手が離れた。
不機嫌な様子の羽鳥。
唖然としているあたし。
何も言わない千秋。
お互いがお互いを敵視しているみたいな口調と態度だってことはわかる。
その理由をあたしは知らない。
教えてもくれない。
身体がグラッと揺れて地面から足が離れて、鼻の奥がツーンと熱くて泣きそうになってしまった時、あたしは気づいた。
羽鳥のバイクに股がっていることに。