NAO



 先に進むにつれて手が震える。



 「…んだょ…何だよこれ…」



 手紙を持つ手に力が入る。


 そんな時ーー。



 「ただいま。あら、直樹帰っていたの?」



 呑気な声で、俺に話しかけてくるお袋。


 その声に体の奥から、怒りが込み上げて来る。


 お袋は買い物袋をテーブルに置くと、それを冷蔵庫に直し始めた。



 「そんな所に立ってないで、明日の準備でもしなさい。」



 呑気な口調で言ってくるお袋に



 「お袋…この手紙…なんだよ…」



 震える声で話す俺…。どう言えば良いのか分からない。


< 292 / 367 >

この作品をシェア

pagetop