【盲目の天使】番外編
空は青く澄んで、まさに旅立ちにふさわしい日だ。
「あの・・・俺を産んでくれて、ありがとう」
照れていえないから、言い逃げするつもりで、騎乗する前に母に告げた。
一生懸命俺を育ててくれた母。俺の旅立ちを許してくれた母。
もう二度と、ノルバス国の地を踏むことはないかもしれない。
けど、俺は決してあなたのことを忘れたりしないよ。
と、
背中から母が俺に声をかけた。
「子供はなるべくたくさんつくりなさいよ。
そしたら私が面倒を見に行ってあげるから」
最後の最後まで、母の涙は見えなかったのに、その声はなんだかかすれて聞こえて。
俺は驚いて振り返った。
けど、母の泣き顔は見えなかった。なぜって、俺の視界は、ゆらゆらと揺れて全然前が見えなかったから。
「マーズレン。子供を産んだら、真っ先にお義母さんに見に来てもらいましょう」
俺の前で馬にまたがったルシルが、少し振り返って俺に笑いかけた。
そうだね、ルシル。君と二人なら、何でもできる気がするよ!
俺たちは、新しい旅立ちに向けての一歩をようやく踏み出したばかりなんだ。
俺は涙を振り払って、これから起こる未来を、まっすぐに見詰めた。
<つづく>