レモン
第四章

Nightmare.....


「うわぁ~ひでぇ事故。」

「これじゃあ助からないわね。」

バスに乗っていた人達はまるで他人事だ。

私も同様、
同じように身を乗り出し興味だけで外を覗いた。


動くバスの小さな窓からの景色には、
大きなトラックに押しつぶされるように、
小さな一つのバイクが見えた・・・。

私はそれを見た瞬間固まった。

潰されているバイクに見覚えがあったのだ。

私の瞳にはしっかりと俊司のバイクが写っていた。


救急車やパトカー、野次馬が沢山居て、
本当に一瞬しか見えなかったのに・・・。

どうして見つけてしまうんだろう・・・。


私はパニックになっていた。

小さな声でずっと、


「・・・降ろして。・・・止めて。」


そう繰り返し呟いているのに、
隣に居たおばさんが気づいて声を掛けてくれていた。


でも私はそれにも反応しなかった。


何かに気づいたのか、
前に座っていたお兄さんが前に走り出した。

そして、運転手に事情を説明し後ろに戻ってきた。

お兄さんが戻るとバスはそこで急停車した。


私の手を取り一緒にバスから降りて、
お兄さんはまた戻りバスは居なくなった。


私は動揺していて御礼もしていなければ、
顔も何て言ってくれていたのかも覚えていない・・・。


< 71 / 106 >

この作品をシェア

pagetop