レモン

Will.....


事故後、
健はお姉さんから連絡を貰い病院に駆けつけた。

俊司の家族は皆すぐに病院に駆けつけて居て、
始めは緊急治療室の前に集まっていた。

だが健が着いた先は、霊安室だった。

健が駆けつけた時にはすでに、
息を引き取った後だったのだ。


皆泣き崩れ、話なんて出来る余裕はなかった。
けれど、健はある事に気づき声を出した。


「小柄さんはまだ着てないんですか?」


健の言葉に皆、黙り込んでしまった。

(小柄には言えない・・・。)

きっと皆、同じ事を思っていたのだろう・・・。

だが健は違った。


「俊司さん・・・きっと待ってるんですよ。」


そう言って廊下に出て小柄に電話を掛け出した。


だが、何度掛けても出なかったのだった。

俊司の遺体を家に持ち帰り、
通夜や葬式が行われても、
小柄には連絡がつかなかった。

家族の皆が少しの時間を見つけては、
何度も小柄を探したりしていたが見つからなく、
俊司のお別れが済んでしまった・・・。


ほっと一息ついた時、
玄関が開く音がして小柄が1人帰って来たのだった・・・。

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