ミュージック・ラブ3〜愛を奏でるメイフラワー〜
『ええねん、ええねん。敬大気をつけて帰れよ』

誠治は大きく両手を振り、敬大を見送った。

誠治と別れた敬大は新幹線に乗り込み、東京へと帰った。

帰りの社内で敬大は淋しそうな表情のまま、ただ静かに窓の外を見つめていた。

東京についた敬大は空き家になっている母親との思い出の詰まった前の家の前にやってきた。

敬大は空き家をじっと見つめ、懐かしい日を思い出していた。

そして敬大は日の暮れ始めた街を歩き、自分のアパートへと帰った。

『ただいま、レミ。…って、そうかレミはお店に行ってる時間だな』

敬大は部屋に上がり、ベッドに寝転んだ。

部屋に入った事で周りに人がいなくなり、一人になった敬大は今まで堪えていた涙が溢れ出した。

そして涙を流しながらふと思い出したのだった。

この1年近くの間に母がくれていた手紙の事を…

読まずに捨てようとしていた5通の手紙の事を。


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