ミュージック・ラブ3〜愛を奏でるメイフラワー〜
『楓…』

敬大はにこやかにしている楓を見つめた。

すると今度楓は鞄の中から一枚の白い紙を取り出し、それを両手でしっかりと持った。

『瑞輝敬大』

楓は体育館内に響き渡るほどの大声で敬大を呼んだ。

『な、何だよ?』

敬大は少し戸惑いを見せた。

『卒業証書、瑞輝敬大殿。辛いこともありましたが、あなたは乗り越えてまたこの高校に戻ってきました。たくさんの色んな思い出を胸に過去を嫌いにならないで、笑顔で歩んで行って下さい。卒業おめでとう』

そう言って楓は敬大にお手製の卒業証書を手渡した。

『な、何だよコレ…』

敬大は戸惑いながら証書を受け取った。

『敬大にだって卒業証書を受け取る資格はあたしはあると思うから…』

楓はそう言ってニコッと笑った。

『楓…』

敬大は卒業証書を握りしめた。

敬大にとって忘れていたかった遠いあの日―。

辛かったあの日にも、そこには笑顔もあったことを楓は思い出させた。

敬大にとって5年越しの卒業式―。

みんなと同じように卒業したかった敬大にとって、例えゴッコだとしても今日は素直に嬉しかったのだった。


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