ワタシの中の少女

出逢い

彼が夫になってからもう12年たった。
ワタシの親の恋愛観は古く否定的な人で結婚前に体を重ね合わせることなんてとんでもないという感覚で育ってきたせいか、箱入りのような娘時代を過ごした。元々積極的ではなかったっけ。好きになる人とは気持ちが通わないことも直感的に感じたりしていたから中々恋愛をする経験を持てずにいた。
ワタシに彼と呼べる人ができたのは短期大学も終わろうとしていた頃、彼が夫になる人だとは当時思ってもいなかったけれど彼はその頃から恋愛と結婚はセットだとワタシに語っていたっけ。ワタシがそれは違うと言ったら彼から頭ごなしに否定されていた。
あの頃のワタシはまだ何もかも初めての気持ちが勝って違いさえ新鮮に感じる余裕があった。
いや、むしろ知らなかったからできていたんだろうな、今となっては突っ込み所満載で有り得ないくらい、世界は見えていなかったんだ。
違いが面白いと感じることができたあの頃、今はそれがワタシの毎日に重くのしかかってお互いの心にすれ違いを感じる。
この違いは何だろう。違いを楽しむどころか苦痛にしか感じることができないなんて。
ワタシはいつから思いやりが無くなってしまったの。そもそも最初から思いやりはあったの…?。
今は誰に咎められる事もなく同じ屋根に暮らす家族の関係なのに。会いたい時に会えない、週末毎に会う関係を卒業することがその頃のゴールだった。
何となくダラダラ続けていた二人の関係を清算したかった。
結婚はいわば適齢期 だった。口うるさい親から離れて暮らしたい気持ちはあったがあまり彼にこだわっていたわけではない。ただ、タイミングが重なった。会社での重圧とストレス、彼からの甘いコトバがその頃のワタシの思考をさらに熟慮から遠ざけた。
もともとあまり深く考えずに行動してしまう所がワタシにはあった。
彼と上手くいかなくなった時、彼以外の人と意気投合した時もあったが最終的にはラインを越える勇気がなくて自然消滅してしまった。
ワタシは自分の中の「少女」の存在をまだその頃はわずかにしか感じることができなかったんだ。
今までも上手くいかなくなるとこの「少女」はきっとワタシの中から出てきてワタシに問いかけてくれていた気がする。
ただワタシが気がつかなったんだ、まだ世界は狭く見えてなかったから。
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