きみのて

春よ、恋


意外にも貯金が趣味という美加は、バイトばかりでほとんど午後から大学へやってきていた。

わたしは午前中、授業へ出る以外は軽音楽部の部室で過ごした。


今日はこれからサークルの集合写真を撮るため、同じサークルの光と広間でぼーっとしながら時間を潰していた。



「光はバンドすぐやるの?」

「うん。やる予定。」

「パート何?」

「俺、ボーカルだよ。栞ちゃんもボーカルでしょ?」

「栞は・・・まだ決めてないんだよね。」

「栞ちゃんもボーカルだと思ってたけどね。」



何気なく広間の入り口へ目をやる。

その時、Tシャツにチェックのパンツを履いた、挙動不審な男子が一人、広間に入ってきた。
< 15 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop