満月の銀色ススキ
一章
今年は猛暑日だった。
本来ならば、陽が落ちてから生まれる涼は微塵も感じられない。

寝苦しさを覚えた望月は、寝床を離れて外に出た。

幾分か、室内よりも涼しい。
時折ふわりと頬を掠める風が心地よい。

都会からはだいぶ離れた田舎町。
それに見合った畦道を歩く。

暑さの所為か、少し時期の早い薄が伸びている。
風にサラサラと音を立てて揺れていた。

空を見上げれば、ちょうど満月。
望月は美しさに口元を緩める。

家より少し離れた林に入った場所。
草が茂っているが、広いその空間で立ち止まった。
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