満月の銀色ススキ
草原に立つ望月。
それに駆け寄るススキ。


「遅かったね」


そう、肩に触れると、ススキは眉を寄せた。

反応がない。
そのうえ、触れた場所が氷のように冷たかった。


「望月…また、調子悪いんじゃないの?」


眉を寄せて訊ねると。
ぽたり、と腕に微かな温度。

それに視線を向ければ。

水滴が腕を濡らしていた。

怪訝に思って望月の顔を覗き込んで。
ススキは言葉を失った。


「…望月?どうしたの…?」


「ごめんなさい…」


「え?」


震えた声。
望月が唱えたのはそれだけ。

そこから泣き崩れてしまった。

ススキは戸惑う。

泣き崩れた望月の躰を抱き締めて。
どうしていいのかを模索する。

結局、出した答えは無難なもので。
背中を擦り、望月が泣き止むのを待つしかなかった。

サラサラと流れる草の音。

夕暮れに染まった橙の空を見詰めて。
ススキは何故か、無性に泣きたくなった。
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