緑ノ刹那
『とりあえず今夜はここに泊めてもらってもいいかね?』
この家の主であるフィリアに、バルドが確認をとると、

『もちろん。
それに、この家は私の物とは言えないの。
私が物心ついたときにはいつの間にか建っていて、それを勝手に使わせてもらってるだけ』
という、なんとも言えない返事が返ってきた。

それにバルドは驚いて、
『ずっと独りで暮らしてるのか?』
と聞いた。

それにフィリアは平然として答える。


『そうよ?
もともと、この森に人が入ってくることは出来ないの。
無理に入ろうとすれば、森の入り口で永遠にさまよい歩く事になる』


『だが、俺とリーフは入ってこられた』


フィリアは遠くを見つめる様な、何を考えているのかまるでわからない瞳でリーフとバルドの二人を見据えた。



『それは、リーフが王の系譜に連なる者だから。
バルドはリーフを迎えに来たから。
本来なら、王族とはいえ直系でなければ森に入る事は出来ないけれど、今回は特別』


『『……』』




『さぁ、明日は早いんでしょ?
もう寝ましょう』
そう言って、フィリアは何も無かったかの様に笑った。



結局、リーフとバルドには、その言葉の真意は掴めなかった。
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