謝罪人 Kyouko
「俺たち兄妹は、四角市で生まれ育った。子供の頃は過疎化が進んで何も繁栄しない町だった。当然、住民は産業のある都市へ離れていった。俺たちも学校の友達が一人、二人と町を離れていく時、なんか寂しい思いがした」

松山は、しんみりと話す。

「子供ながらに久美は、どうして、みんな町を離れるのかと、俺に聞いてきたことがあった。俺は、町が豊かじゃないからだと答えた」

松山がタバコを吸った。
白い煙が口の中から、こぼれるように出る。

「誰かが、町を豊かにしなければいけないことを話すと、子供心に久美は、自分が町を豊かにして、友達を呼び戻したいと思ったらしい」

再び、松山がタバコを吸う。

「その頃から、久美は四角市の市職員で働こうと決めたんだ。俺とは違って頭も良くて、四角市の職員採用試験のために一生懸命勉強していた・・・だが・・・」

松山の言葉が切れた。






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