その声でいつか
『気を付けて帰れよ』
『分かってるって!』
『樺乃、』
その花は俺の為に咲くことはない。
その甘い蜜はその男のためのもの。
『ん、…柚…』
当然のように唇を塞いだその男。
触れ合う唇の隙間から漏れる時でさえ、その男を呼ぶ彼女を見て。
壊れればいいと思った。
二人を繋ぐ全てが。
いま全部バラして、男のプライドも彼女の想う気持ちも壊してやりたい。
知って、泣いて、忘れればいい。
そんな男のことなんて。