ピアスに秘めた想い
俺は鏡に映る2つの石を眺めた

6年も過ぎれば、穴を開けたときの痛みなどとうに忘れていた

あのときは、心の痛みと耳の痛みが重なって、一晩中泣いていた気がする

あれ以来、泣くものかと決意して涙を封印した

まあ、泣くようなほど心のダメージを受けていない…と言えばそれまでだけど

18歳となった今は、『良い想い出』だよ

あんなに復讐したがっていた克海だったのに

あっさりと警察に捕まった

もっと抵抗したり、反抗したりするかと思ってたけど、呆気なかった

俺のほうが緊張しすぎてたかもしれないな

懐かしい手紙だ

もうあのときのように、心は痛まない

手紙を見るだけで、胸が苦しくなることもない

それが時が癒してくれた…ということになるのかはわからないが

俺はもう、何もできない頃の餓鬼じゃねえ

守りたいものは守れる力を手に入れた

今の俺と、クレアが出会ったら死なずに済んだのかもしれない

克海に殺されるようなヘマはしねえよ

でも……

「…っく、ひっく」

どこからか、すすり泣く声が聞こえてきた

桃香?

泣いてるのか?

そっか…
今、クレアを出会ったとしても、俺はたぶんクレアを好きにならなかった

そんな気がする

クレアよりも大事な女性を見つけている…気がするんだ
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