嘘で隠された現実(リアル)
俺の目に映る幸矢さんは、朝とは違い、疲れを滲ませている。

今は、とても忙しい時期なのだろう。

そんなときにこんな話をしてもいいのだろうかと、今更ながら戸惑う。


「で、話って?」


行動を起こさない俺を、幸矢さんが急かす。

俺は強く拳を握り、覚悟を決めた。


「俺、火月に戻るよ」


幸矢さんは一瞬大きく目を見開き、それからすぐに目を伏せた。


「理由を‥訊いてもいい?」


「水月に‥逢ったんだ…」


俺は、病院で聴いた内容を幸矢さんに話した。

幸矢さんは多少驚いていたものの、あくまで冷静に、俺の話しに耳を傾けていた。


「幸矢さんは、当然知ってたんだよな?俺と水月が兄弟じゃないってこと」


「うん‥言えなくて、ごめんね。まさか水月くんが、そのことを知っていたなんて思わなかったから…」


「言わなかったんじゃなく、言えなかった、なんだ?」


俺がそう言うと、幸矢さんはハッと顔を上げ、それから気まずそうに目を逸らした。
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