空に描く青
「志緒ちゃん、ピアノ弾ける?」
私の腕をガシッと掴んで逃がさない、というオーラ。
「少し…なら。」
嘘をついた。
少しなんて嘘。
前は賞をとった事もあるんだから。
でも、もう弾かないと決めた。
「少しでもいいのっ。あのね、体育館の音声調節のが壊れちゃったから、置いてあるグランドピアノで弾こうってなったんだけど…。」
どよーん、とした空気が立ち込める。
「だけど?」
「ウチのクラス、文化部の人一人もいないんだもん!」
そう言ってる、菜月もテニス部だ。