ビターに愛して シュガーな恋心
「またくだらねえこと…考えてるんだろ」

耳元で、勇人さんの声がする

低くて、温かい声だった

「ママに会いたい
…会いたいよぉ」

勇人さんがあたしの頭を撫でた

後ろから強く抱きしめられる

わかってる

ちゃんとわかってるよ

ママにもう会えないし、今の言葉は勇人さんを困らせるだけって

でも本当に会いたい

「桃香、寝ろ
寝れば、夢の中で会いたい人に会えるから」

勇人さん?

「ベッドに横になれ
そんなとこで泣いていたって、桃香の会いたい人は来てくれないぞ」

あたしは勇人さんの手にひかれて、ベッドに足を乗せた

すでに一度、今夜は勇人さんが横になった布団の中に、あたしが横になる

まだ勇人さんが横になっていたときのぬくもりが残っている

ベッドが温かくて、勇人さんの匂いがした

「ごめんなさい」

あたしは手を握っている勇人さんの手を離した

「何が?」

「あたし…勇人さんに迷惑ばかり」

「くだらねえなぁ
桃香はメイドの仕事をしているだけだろ
それより少しパソコンを使ってもいいか?
調べたいことがある」

「あ…はい
あたしが邪魔なら、やっぱり居間で」

「いいんだよ
桃香はここで寝ろ」


< 86 / 417 >

この作品をシェア

pagetop