恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

いや、もしかするとその清楚が外見とは裏腹に、中身は腹黒オンナなのかもしれない。なにせアノ光ものブラザーズと同じ血がカラダに流れてるんだから。

美人なのにカレシがいないのも、きっと性格が悪いからだと思う。

おにーちゃんもだらしなく鼻の下なんか伸ばしてると、ひどい目に遭うかもしれないから気をつけて。



      ×      ×      ×



その後、川向かいに建つAサヒビールの火の玉のようなオブジェを見ながら、隅田川を下る“水上バス”へと乗り込むおにーちゃんとやまぶきさん。

そんなふたりを、付かず離れずの距離を保ちつつ尾行していたあたしもモチロン水上バスへと乗り込む。


ふたりが水上バスの屋上デッキへと上がれば、モチロンあたしもデッキへと上がる。

川面を吹く風も心地よい屋上デッキからは、流れ行く川の両岸の景色を360度のパノラマで見ることができるんだけど、そんなの今のあたしの目には入らない。

ごくごくフツーの乗客のひとりを装ってはいるけど、その視線は数秒おきに、チラチラとふたりのほうへと向けられていた。
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