恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

おばさんの目がとてもやさしかった。


……と、そのとき……、

「ちょっ、待てよっ!」

……と若い男のヒトの声が聞こえてきた。


声のしたほうを見ると、オープンカフェの一番奥のテーブルにいる若いカップルのうちのロンゲの男のお客さんのほうが、露骨な不快感もあらわに、眉間にシワを寄せていた。

「えっ……!?」

今度は置き間違えてないよね? だって、いまおばさん「ありがとう」って言ったし。


「ちょっ、そこのメイド、コッチ来いよっ」

“あたしはメイドじゃなくてウエイトレスなんだけど……”と思いつつも、そのヒトのほうにかけ足で向かう。

「な、なんでしょう」

「“なんでしょう”じゃねぇっ。先にホットドッグを注文したのは俺らだろーがっ。なんで後から注文した客に、先に出すんだよっ」


そ、そ、そうだった! たしかにコッチの若いカップルのほうが注文は先だった!

やっちまった! これで4回目のミスだ!

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