恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「茶化さねぇで、ちゃんとヒトの話を聞けってんだ。いいか?」

そう前置きをしてからおにーちゃんは語りはじめた、すごく幸せそうな顔をして。

「オレさ、自分で言うのもなんだが、今まで好き放題のことやってきてただろ? なのにおやじは、そんな放蕩息子のオレのことでも、なんだかんだ言いながらも結局受け入れてくれたんだぜ。ヤッパ持つべきものは家族だよな。他人同士じゃ、こうはいかねぇ」

「そーだね。家族ならたとえどんだけ激しいケンカをしようが、それっきりってことはないもんね。たとえ世界中の人間みんなが敵になったとしても、家族だけは最後まで味方でいてくれるんじゃないかと思うもん。運命共同体って感じかな?」

「あぁ、まさに運命共同体だ。結婚するってことはよぉ、オトコとオンナが恋人同士から一歩前進して、家族になるってことだろ?」

「当たり前じゃん。それが結婚じゃん」


「だからな、もし紫苑と本当に結婚するんなら、お前にも“家族っていいな”って、のちのち思えるような……そんな結婚をしてもらいてぇんだ。そーいう結婚なら、オレもバンザイして大喜びで祝福してやらぁ」


「…!!」


まさか、おにーちゃんがあたしのことを、そこまで考えてくれてるとは思わなかった。

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