恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「お前の気がすんでも、オレの気がすまねぇんだよっ。地獄の底まで突き落としても、まだ足りねぇっ」



「やめてっ。お願いだから、もうやめてっ」



振り下ろそうとするおにーちゃんの右手を、必死で押しとどめようとする白鳥さん。



おにーちゃんに胸倉を捕まれた紫苑さんは、自分のしたことを反省しているのか、いっさい無抵抗のままだった。

わざと抵抗しないのか、それとも抵抗できないほど酔ってるか、それかダメージを受けてるのか、それはあたしには分からないけど。

でも紫苑さんのイケメンフェイスは、今や見るも無残で、まるで試合終了後のボクサーみたいにボロボロだったけど、殴られてザマァ見ろという気持ちにはなれなかった。


考えてみたらあたしなんかが、紫苑さんみたいな大金持ちの玉の腰になんて乗れるはずないんだよね。

バカみたい、あたし。叶いもしない夢なんか見て……。

あ、そっか。紫苑さんは遊園地っていう夢の国の王子さまだった。

だから、あたしに夢を見させてくれたんだ。
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