1人のお嬢様の願い
中庭について、辺りを見回した。

すると、庭のライトアップされているベンチの所にお母様の後ろ姿が見えた。


「…っ、お母様……。」


ゆっくりとお母様の方に歩く。


ドクッドクッドクッ

心臓が変な風に鳴っている。

もう!何に緊張してるのよ!
静まれっ!


静かな中庭には私の足音だけ。
それが、余計に自分の心臓の音を目立たせた。


近くまできて
声をかけようとした時、


「いらっしゃい、詩依良。」

気付いていたのか、驚く様子もなくお母様は優しい声で言った。


「……!お母様…。」

「来てくれたのね。嬉しいわぁ…。」

嬉しそうにお母様は呟いた。

私が何も言えず固まっていると、顔をこちらにむけてどうぞと自分の隣をあけた。

「あ…はい。」

返事をして隣に座った。
お母様はそれを見ると、満足そうに頷いた。


「…ずっと…待っていたのですか?」


「えぇ。だから、あなたは来てくれたじゃない。」

優しい笑顔を向けてそう言った。


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