1人のお嬢様の願い

─私は。

「詩依良…。あなたの気持ちを…言ってちょうだい。」

「…え…?」


お母様は真剣な表情で見つめてきた。


「あなたに…感情を。
失ってほしくないの。」


感情……?


「私は……っ、別にっ」

「あなたは今まで、お友達にも…本当の感情を、
思いを隠していたんじゃない?」

「……っ!」

お母様が私の言葉を遮った。


私は、

凪百合や都流羽にも…?


感情のない、
笑顔を見せていたの?

《詩依良はここが嫌い?》

昼間の2人の言葉を思い出した。

あの2人は気付いていた…?

“ここ”には
このお金持ちの世界と、
あの2人の所

どっちのも意味だったんだ。


「……。」

私は凪百合達を傷つけて……?


「詩依良。」


優しい声で呼ばれた。



「…お母様……。」


顔をあげてお母様を見た。


「あなたは…今、何を思っているの?私は、それを知りたいわ。」



今……?


「…感情を…隠さないで…。
素直に聞かせて。
あなたは何に怖がっているの?」



< 31 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop