世界は残酷な女神の笑みを理に

三節「目の前には歪み始めた世界と秩序」

「そ…それ、取ったら…先生が…。」


「!…お前、これを知ってるって事は参加者だな…。俺に玉をよこせ。」


杉村は銀色の玉を6つズボンのポケットにしまえば、自らの欲を露にし、蓮にへと歩み寄った。
一歩後退すれば次の瞬間、踵を返し、廊下に出ては正門に向かい勢い良く足を踏み出した。


「逃がしゃしないぞ澄川ァー…!」


最早、目先の欲に身を任せているのか、杉村は蓮の後を追い始めた。
廊下を全力で駆け抜けながら、蓮は横目に補講をしている教室を覗いた。
然し、中では勉強という言葉はなく、生徒同士が殴り合い、参加者ではない人間は、慌てて止めに入るも、欲に目の暗んだ人間には、些細な歯止めでは意味がなかった。
皆の瞳には、己が手にしたい欲望だけを映し、それしか考えられないのか、銀の玉を奪われたと同時に何かに心を食い荒らされていく様に心臓を押さえ辛そうに悶えるクラスメートさえ横に蹴り払い、銀の玉を持つ者に駆け寄り殴り掛かった。



所詮ゲームで、殺し合いだと…?


正気なのか?



だったとしても…。



「ふざけんな…っ!!」



走る足を止めれば振り向き様に、直ぐ後ろを走って来た杉村の右頬に強く握った拳を捻り込んだ。
重くも鈍い音は蓮の耳に深く残り、振り切った拳は人を殴った衝撃に震え、我に返った瞬間に力が抜け、床に座り込んだ。
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