薔薇の花嫁
1ヶ月に渡って開かれる宴には、多国の美しい姫達が集いました。

しかし、着飾った姫達の存在は、王にとっては煩わしいものでしかなく、王は1日目にして数刻で宴を去ってしました。


自室に向かう途中、薔薇園を通りかかった王は、そこに人影を見つけました。

王が静かに近寄ると、そこには1人の姫の姿がありました。

姫は白い薔薇を見つめ、手を伸ばし、一輪手折りました。

棘に傷つけられた姫の手から、赤い血が流れるのを見た王は、思わず声を掛けました。

振り向いた姫は、「好きな花だったもので」と呟き、謝りました。


「いくら美しくとも、薔薇には棘があるのだから」

そう言って王は叱りましたが、姫は自分の手の中の薔薇を見つめると、小さく首を振りました。


「私は棘を持つからこそ、薔薇が好きなのです」

姫はそう呟き、悲しそうに、それでいてどこか暖かく微笑みました。

王はそんな姫の美しさと微笑に、一瞬で目を奪われてしまいました。
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