フランシーヌ
「ごめん。でも、オレ、これ辞めると、この世の終わりを視るような気がするんだ…」

フランシーヌは、ふう、とため息をついた。

「ばかね」

ジョーは、狙撃事件があってからすぐ、左目の秘密を少女に打ち明けた。

他人に自分から話したのは初めてだった。

少女は、興味本位の質問もせずに黙ってそれを受け入れた。

「煙草なんて…。自己欺瞞よ」

舌足らずな口が、そんな言葉を吐き出す。

ジョーは、出窓の壁を背にしてストンと床に腰を下ろし、ふわりと前髪をかき上げた。

「昨日、視た映像が頭から離れないんだ。みんな、死んでいった…。大人も子供も、兵士も民間人も、老人も、妊婦も、赤ん坊も…。悪魔の光に焼かれて、死んでいった…」

フランシーヌは、目を細めてジョーの顔をのぞき込んだ。
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