流れ星に願いを 〜戦国遊戯2〜
体も洗い終わって、幸姫は幸村と一緒に湯船に浸かった。玲子は、先に出てるねと言うと、お風呂場をあとにした。

「ゆきむらは、れいちゃんのおともだちなの?」

ちゃぷちゃぷと置いてあったあひるのおもちゃで遊びながら、幸姫は聞いてみた。幸村は少しだけ困ったような顔をした。

「幸姫の父上はどうしたのだ?」

聞かれて首を横にふる。

「いないよ」

「そうか…」

「でも、おとうさんは、すっごいかっこよくて、つよくて、やさしいんだって!」

目をキラキラと輝かせながら、幸姫は幸村をみた。

「れいちゃんがね、前におしえてくれたの。こうきのおとうさんは、とってもすてきなんだよって」


ごめんね、幸姫。寂しいよね。


幸姫ははっとした。

「そうか…」

少し照れたような表情をする幸村。しかし、幸姫はさっきまでの表情とはうってかわって、沈んだ顔になった。

「どうした、幸姫?」

聞かれて、幸姫は首をふる。幸村が首をかしげていると、幸姫はすっと小指を差し出した。

「れいちゃんに、おとうさんのこと聞いたらかなしそうな顔するの。だから、ゆきむらも聞いちゃだめだゆ!やくそくのゆびきり!」

すっと顔の前に指を差し出すと、幸村はその手をじっと見つめていた。

「ゆきむらも、はい!」

幸姫に腕を揺すられて、少し戸惑いながら、幸姫と同じように小指を出してきた。幸姫は、幸村の小指に、自分の小指を絡めると、ぶんぶんと上下にふった。

「ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーます!ゆーびきった!」

ぱっと指を離す。幸村は不思議そうな顔をしている。

「ゆびきりしたんだから、やくそくだよ!」

幸姫がにっこりと笑うと、幸村もくすりと笑いながら頷いた。
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