月の雫 -君と歩む彼方への道-
数え切れない想念の主語は、全部「オレ」だった。




(……ああ、そうか)



これが何なのか、オレはやっとわかった。


これは、オレがもともと持ってる心の壁だ。

魔道を使うまでもなく、オレは必死でオレを他人から切り離して、自分を守ろうとしてるんだ。



(しかし、すごい壁だな、これ)


灰色の想念がうずまく、灰色の壁。



なんて狭い世界に生きてるんだろう。

必死に自分を守って、まるで小さい小さい家に閉じこもってるみたいだ。


生まれてからこれまで、長年培ったこの心の壁は、ちょっとやそっとじゃ壊れそうにない。
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