月の雫 -君と歩む彼方への道-
ふと、何かが心に流れ込んでくるのがわかった。


(記憶を消せばいい)



シル、おまえ……



「シル、そんなことはよせ」


オレはとっさに声を掛けた。


シルヴァイラは、はっと小さく息を吸い込んで、鋭い金の目でオレをぎりりとにらみつけた。



「おまえ今、じいさんの記憶消そうとしただろ」

「……」

「そんなことをしても無駄だろ。

シルヴィが女だってことは、研修所じゅうに知れわたってしまったんだ。

小手先のことではこの状況はどうも変えられないよ。

人を変えることを考えないで、今のこの状況でできることを一緒に考えよう」


「……」


シルヴァイラは無言で目をそらした。



――怒ってるのか?
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