月の雫 -君と歩む彼方への道-
「それもびっしりと、肩や腕の方まで続いてたんだ。

古い傷もあったし、新しいあざもあった。

だから何だって言われるかもしれないけどさ……

本人に聞いても気にするなって言うし。

気にしない方が難しいだろ」


オレは出されたお茶をぐびぐび飲んだ。


じいさんは、深くうなずきながら言った。


「その理由なら、わしは少しわかるかもしれない」

「なんだって?……げほっ」


お茶を飲みながら声を出してしまって、オレは思わず咳き込んだ。


「げほっ、わかるだって? げほっ うほっ」


じいさんは、そんなオレをしばらく情けなさそうに見ていたが、やがて穏やかに話し始めた。
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