唄を聞かせて
「みきちゃん」


彼を最後に見かけた日。

正確には声を聞いた日。

それは冬休みに入って間もなくのことだった。

凍る地面に気をつけながら、近くのコンビニまで買い出しに行ったあの日。

私はたっくんの声を聞いた。



「みきちゃん」


いつもと変わらない、いつもと同じ響き。

それらは全て日常的で、突然失われるなんて思いもしなかった。



「     」


振り返った先に、誰もいなかったことを除いて。




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