恋する旅のその先に
わたしの中で、秋を代表する食べ物といえば、メイプルシロップたっぷりのホットケーキ。
どうしてと聞かれるとちょっと困るのだけれど。
でも、そうね。
あの全体的な色合いと、甘く“焦がされた”味と香りが、秋独特の感傷を添えたそれによく似ているからなのかもしれない。
残暑が落ち着いて、昼間の風の中に涼やかなものが混じり出すと、これをどうしても食べたくなる。
そんなとき、飲み物は紅茶がいい。
ただし葉のチョイスには気を付けなきゃいけない。
アッサムは香りが男性的過ぎるし、ダージリンはいかにも過ぎる。
ちょっぴり乙女チックな響きのあるオレンジペコ辺りがちょうどいい。
これにメイプルシロップを溶かして、ほどよい温度に下がるまでしばし香りを堪能。
我が家にオープンテラスでもあればいいのだろうけれど、あいにくと築年数がわたしと同じくらい。
そんなおしゃれなものは残念ながら、ない。
だからその代わりに窓を片っ端から開け放ち、風をめいっぱい誘う。
床に散らばった雑誌はマガジンラックに押し込んで、普段使ってるフローリングテーブルと一緒に部屋の隅に。
そしてだだっ広くなった部屋の真ん中におもちゃのような丸テーブル。
ホットケーキとティカップを置けばもう空きスペースがないくらいのサイズ。
そして、ぺたん、と床に座れば──