恋する旅のその先に

 その後もえんえんと続く語りかけ。

 私はそれをこころのメモ帳に録りながら、彼が泣く泣く別の作業に移るためにその場を離れるまで、聞き入った。

「ふふふ」

 これで当分の間、レシピには困らない。

 忘れてしまわない内に早く家に帰らなければ。

 そういえば彼は新人なのだろうか?

 何度となくこの店には来ているけれど、今までは見かけなかったような気がする。

 それとも私が気付いてなかっただけだろうか?

 だとしたらなんておしいことをしていたのだろう。

「さて、と」

 夕方のスーパーはなんだかとても愛おしい。

 それは“おつとめ品”が自分と重なるからで。

 そしてそんな“おつとめ品”を心底愛する店員さんがいるから。

 明日からはもっと愛おしくなっていくのだろう。

 それが楽しみで、少し軽やかに歩いてみると──



──買い物袋の中で、買い込んだソーメンの束がくすりっ、と笑った気がした。

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