不機嫌な果実
「どうしたんですか?」
「――え?」
寝ていたはずの小菅がゆっくりと身体を起こし、麻紀の目尻にすっと人さし指を当てた。
「何か悲しいことでも思い出したんですか?」
麻紀は驚いて目を見張った。
「渡辺さんの泣き顔を見るの、昨日に続いて二回目です。そんな顔されたら心配でたまりませんよ」
「泣いてたの?……あたし」
コクンと頷く小菅を見て、はじめて自分が涙を流していたことを知った。
メニュー