不機嫌な果実
「渡辺さん」
「……なに?」
麻紀がふっと顔を上げたときだった。
長い手がすっと伸びて、瞬く間に小菅の胸に収まった。
「きゃっ、」
あっという間の出来事だった。
何か言葉を発しようと思うけれど、胸がバクバク音を立てて言葉にはならなかった。
どれくらいこうしていただろう。
『やめて!』と腕を振り払うこともできたはず。
でも、麻紀はしなかった。
目を瞑り、胸のドキドキを鎮めようと呼吸を整えている麻紀に、頭上から優しい声が響いた。
「僕、我慢ももう限界です」
「――え?」