執行猶予3年
その日、
仕事に行くしかなかった。
すぐに大家に電話して、
家賃の振込を10日のばしてもらった。
これ以上待てないって言われた。
明日から、
現場みっちり入れれば、
払える。
オカンの3万は振り込んだし。
米ももう僅か。
小さいおにぎり1つと、
自家製麦茶をペットボトルに詰めて、
仕事に行った。
現場の時は、
タバコと1Lパック100円の水でしのいでた。
タバコを吸ってれば、
食べなくて済む。
悲劇はそれからだった。
お盆中事務所は休みだけれど、
その期間の予定を送れば、
その間も仕事ができるはずだった。
しかし、
仕事は回ってこなかった。
つまりは、
珈琲のバイト以外、
仕事がない。
その給料日は来月。
鶴たちに頼るわけにはいかない。
あいつらも、
いっぱいいっぱいなのは知ってる。
まして、親になど…。
俺は、
雅美に電話した。
彼女は高校時代の友人。
此方に出てきてから何度かあったことがる。
気の合う友達で、
今は東京で大手被服メーカーで、
デザイナーをしている。
夜。
さっそく電話した。
『一愛つん。
どうしたの~?』
「悪いんだけど、
金貸してくんねぇ?」
『いいよ~。』
仕事したばったりの雅美も、
金はなかったろうに、
貸してくれた。
5万借りて、
すぐに振り込んだ。
でも、お盆中仕事をしていなかった俺。
そのあとの金が続かなかった。
そしてとうとう、
金融機関の借金に手を出した。
もう、
この頃には頭の99%は金の事しかなかった。