ヒメ恋~Last Love~
「1人で?」


「はい」


あたしは真っ直ぐ父を見つめた。


「美海…片親がどれだけ大変なことかお前はまだ分かっていない…。体裁もよくない…」


「でも生みたいんです。海里の子供を…。この子はもう生きてるんです」


分かって…お父様。

祈るような思いだった。


「ダメだ…お前が苦労するだけだぞ?それに子供だって…父親の顔も知らずに育って…自分の存在すら知られていないなんて…不幸に決まっている」


父の言葉が胸に突き刺さった。

子供を不幸にはしたくない…。

生まれてきたことを後悔なんてさせたくない…。


あたしはそのために生みたいんじゃない…。


一生懸命あたしの中で生きている赤ちゃんを、この世に誕生させてあげたいのーー。



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