ヒメ恋~Last Love~

あたしは海里のもとへ走った。

海里が家に入ってしまう前に話したい。


ちょうど海里が車から降りてくるタイミングであたしは追いついた。


すっかり息はあがっていたけれど、それでも

「海里!!」

大好きな人の名前はいくらでも呼べる。


真夜中に突然名前を呼ばれたことに驚いたのか、海里の体がビクッと揺れた。

ゆっくり振り向くと、あたしに探るように聞く。


「……美海?」


海里に名前を呼ばれるのが昔から好きだった。

あたしを父以外で『美海』と呼ぶ唯一のヒト。


いつも胸がドキドキした。


「海里……」


そんな大好きな海里と目が合った瞬間、涙が溢れ出てきた。

さっきまでの勢いはどこへ行ってしまったんだろう?


久しぶりに見た海里は、また更にかっこよくなっていた。


「美海?どうした?こんな時間に。……何かあったのか?」


海里はあたしの前に立ち、あたしの頬を優しく包み込む。

そして、あたしの涙が止まらないのを見て、海里はギュッと抱きしめた。


変わらない……


彼女ができても、あたしのこと大切に扱ってくれる海里。


でも海里……


その優しさはあたしにとって、とても残酷なんだよ?


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