最期のYou Got Maile
私の病
「あなたの病気は、『多型膠芽腫』と思われます」
 医師の言葉に、私は思わず頭の中が真っ白になった。その言葉を理解するには、多くの時間が必要だったのだ。そして、私は言った。
「えっとぉ…。今の何語です?」
 医師が発した言葉を理解しようと、数秒間頭の中で考えてみたが、私の頭ではどこをどう探しても、医師が発した言葉を理解する単語が見つからなかったのだ。
「勿論日本語です。多型膠芽腫というのは、脳内にできる腫瘍の一種です。それも極めて厄介な部類に入る癌です」
 『ガン』という言葉を聞いて、私は初めて、医師がどうしてこんなに難しい顔をしているのか理解できた。…いや、顔が難しそうなのは生まれつきかも知れないが。
「…はぁ」
 頭の悪そうな返事が私の口から漏れる。正直、私は現在の自分の状況を余り理解していない。まぁ、ガンという程だから、手術しなくてはいけないんだろうなぁ。と漠然的に考えるくらいだ。
「お気の毒ですが、もって一年です」
「えっ?」
 またしても頭の悪そうな私の言葉に、医師が同情の眼差しを向けている。
「それって、どういう…?」
 本当は聞き返すまでもない。今度は、さっき聞いた訳の解らない病名と違い、ちゃんと日本語に聞こえた。それでも、問い返さずにはいられなかったのだ。
「あなたの命は、もって、あと一年と言ったのです。辛い告知ですが、もう、手の施しようがありません」
 これが、俗にいう、死の宣告というやつだ。当たり前だが、初めて耳にした。
「え?だって、ガンなんですよね?手術でチョチョイと取れるんじゃないんですか?」
 私は、何をすがっているのだろう?本当はとっくに理解した筈なのに…。どれだけすがっても、泣き叫んでも、現状が変わることはない。あるのは結果だけだ、それが解らない歳でもない。 
 
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