Chocolat ordinaire Une nouvelle
真輝と武蔵

commencement

この日の東京は快晴で気温も寒すぎず、暑すぎずで快適な気候だった。


深い眠りについていた武蔵は今日朝早く真輝に電話で叩き起こされた。


「はよ。起きた?お前今日暇?暇なら朝9時に京王線の明大前駅に来い!ホームの端にいるぞ。遅れるなよ、遅れたらぶん殴ってやるからな!じゃあな」

「お…い」

武蔵が何か言う前に一方的に真輝が電話を切った。


アーティストとして奇跡的にブレイクしたのは良かったが、事務所的な問題、今のアーティストの世界は新人がそれこそはいて捨てる程毎週出てくるので、あっという間に2人は暇な時間が多くなっていた。
仕事はまだ細々あるが、それでも給料的には生活するので精一杯だったし、誰か先輩アーティストの門下に入って頭を下げて仕事を貰うのも気が引けた。


真輝はそれこそ仕事が少なくなって胃がキリキリ痛む位悩んだが、今となってはどうしようもないと割りきる事にしていた。


武蔵の方が結構こたえたようだった。

自分の歌が駄目だったなのかと自分を責めていた。

しかし、真輝の前では絶対に悩んでるそぶりを見せようとはしなかった。



が、わかりやすい武蔵である。

そんな武蔵の気持ちや感情を真輝は全部わかっていた。

わかってはいたが敢えて何も言わないでいる。





武蔵は重い体を引きずるようにずるずると支度を始めた。


(真輝から…珍し。)


真輝から武蔵を打ち合わせ、仕事以外で自分から誘いをかける事はめったになかった。


プライベートではそれぞれにいた別の友人と過ごしたり、真輝は1人で家にいる事が割かしら多い。
武蔵から誘えば真輝が悪態つかしながらたまに遊びに行く感じである。


(真輝は俺といて果たして楽しいのかな……)


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