precious one


「俺、お前にちゃんと話さなきゃいけないことあるんだよな」

「話さなきゃいけないこと?」

「うん」


キョトンとして稔太を見たけれど、

稔太の表情はいつもと変わらなかった。


上を見ながら、何かを探すような顔をして。

話をするときの、稔太の癖だ。


「大したことじゃないんだけどさ」

「え、何? 気になるんだけど」


一向に話そうとしない稔太に、少し焦ったように話を促した。

じらされると、余計気になる。


「んー…やっぱいいや」

「えぇ?」


こんだけじらしといて。

結局いいやって…


「今はとりあえず、お前と2人でいれたらいいから」


そう言って、いたずらに笑った。

稔太が笑うと、あたしも自然と笑顔になれる。




< 60 / 61 >

この作品をシェア

pagetop