僕等の怪談(1)
あれは昼休みの屋上、淳の一言から始まった。
「俺、誰もいない筈の音楽室で気味悪い歌を聞いたんだ。」
「何それ?ただの歌だろ?誰かが居残りで練習でもしてたんじゃん。」
遠藤はちょっとバカにしたように言った。
「俺もそう思って、直ぐに音楽室をのぞいたけど誰もいなかったんだよ。ドアを開けたら声もパッタリと止んだから気味悪くなってドアを閉めて帰ろうとしたら、今度は楽器がいっせいに鳴り始めたんだ。」
「それでお前逃げ帰ってきたのか?」
遠藤がからかうように笑った。
「だってそんな事があったらお前だって怖くて逃げ出すに決まってるじゃないか。」
淳は遠藤を睨みながら言いすてた。
「怖い怖いって思ってるから、何でもない事にビビるんだぜ。」
「じゃあ何で誰もいない音楽室から歌や楽器の音がするんだよ。」
「う~ん、もしかしたらトイレの鏡を割ったり黒板にいたずらしてる犯人がお前をからかっただけかもしれないぜ。なぁ、お前はどう思う?」
遠藤は僕に同意を求めた。
「うんんっ」
僕はこんな時、どちらに賛成すればいいのか分からなくて、いつも返事に困るんだ。
「じゃあさ、皆で今から音楽室に行ってみる?」
僕は全然行きたくないけど二人の終わらない話しに決着をつけるつもりで提案した。
淳と遠藤がいっせいに僕を振り返った。
振り返った二人の目が大きく見開かれていて、僕は言ってはいけない事を言ってしまったのだと、すぐに後悔した。
「あの僕、今のは冗談だよ。こんな話しの後で音楽室なんて行かないよね。」
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