僕等の怪談(1)
紫陽花の階段は、高台にあるうちの学校から登下校で使用されている階段の一つだ。
石段で出来た階段の周りに青紫の紫陽花が植えられている。
今はちょうど紫陽花も満開で綺麗っちゃ綺麗なんだけど、この季節にこの階段を利用する生徒は少ない。
何故かって、淳みたいな目にあいたくないから。
紫陽花の咲く季節になると決まって、この階段から落ちて怪我をする生徒が出てくるんだ。
しかも皆、誰かに押されたって。
死人が出てないのが不思議なくらいだ。
そう言えば誰かが、みつあみした女の子に落とされたって言ってたな。

「おさげってみつあみでしょ。みつあみの子って何人かいるよね。」
僕は頭の中で同じクラスでも髪をみつあみにしてる子が3、4人はいたな~と考えていた。
「でもあいつら、なんちゃってだろ。」
遠藤がフェンスに背中をもたらせながら言った。
「なんちゃって?」
僕は小首を傾げて遠藤を見た。
「ああ、パーマを隠してる奴とか、学年主任がうるさいから校内ではみつあみとかにしといて、帰りは解いて遊びに行くとかな。」
遠藤が事もなげに答えた。
「パーマって中学生で?」
僕はうろたえて淳と遠藤の二人を交互に見た。
「う~ん。こればっかりは違うって言ってやれないな。」
淳が保護者口調で僕を見た。
ぷうっ。
僕はただ頬を膨らませて抗議した。
「アハハッ」
淳は楽しそうに笑っている。
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