左手は常闇を這う【短編】
そうなると私は“彼”について、いったいいつ何処で生まれて何処から来て、何処でどんな風に過ごし、いつから何故私の傍にいて、何故……、どうして……、と四六時中こんな具合になってしまう。
“彼”は云った。
『知らない方がいいこともある』
だが、私のそれは病気だから引き下がることを知らない。
ある日とうとう、“彼”は云った。
『僕には帰る場所がない』
だから何処から来て、何処の誰か、なんて判らないのだと。