左手は常闇を這う【短編】


永く患った病は、いつの間にかそれが当たり前となり、私のまわりの者達はそれを含め私と見なし、私自身もそれが病のせいではなく、私のせいだと理解するようになっていたから、私の病は誰からも理解されることなく進行していくばかりだった。



私には、左の手首から先がなかった。


いや、正確にはつながっていなかった。
別々に切り離され、私の意思からは隔離された左手首は、もう私のものとは云えないのではないだろうか。




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