Melody Honey

あなたに触れて欲しい

その日の夜、私はシャワーを浴びていた。

家に帰ってきたとたん、
「今夜、俺の部屋にこい」
と、桐生に言われた。

桐生に抱かれるのは久しぶりだった。

彼に抱かれることを望んでいる自分にクスリと笑った後、髪についた泡を洗い流した。

今すぐ桐生に触れて欲しいと、私は思った。

そんなことを思うのは恥ずかしいけれど、私は思った。

官能的な厚い唇で、私の唇を塞いで欲しい。

テナーの声で、私の耳元でささやいて欲しい。

楽器しか知らないような指先で、私の躰に触れて欲しい。

そう思いながら、私はバスルームを後にした。

タオルで濡れた躰や髪をふいていたら、ドアが開いた。
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